領事情報(子の親権問題 -国境を越えた子の連れ去りについて-)

領事情報(子の親権問題 -国境を越えた子の連れ去りについて-)

近年、国際結婚が増えている一方で、海外で結婚生活で困難に直面した国籍の異なる父母のいずれかが、居住地の法律に反する形でもう一方の親の同意なしに子どもを母国に連れ去り、問題になるケースが発生しています。また、日本から子どもを国外に連れ去られる事例もあり、子どもに会えずに辛い思いをされている日本人の親もいらっしゃいます。

以下に、特に米国に居住される日本人の皆様に留意していただきたい点をまとめましたので、ご参考にしてください。

Q1 何が問題なのですか?

A.米国の国内法(刑法)では、父母両者が親権(監護権)を有する場合または離婚後も子の親権を共同で有する場合に、一方の親が他方の親の同意を得ずに子を連れ去る行為は重犯罪(実子誘拐罪)とされています(注1)。

例えば、米国に住んでいる日本人の親が、他方の親の同意を得ないで子を日本に連れ帰ると、たとえ実の親であっても米国の刑法違反となり、再渡航した際に犯罪被疑者として逮捕されることがあり得ますし、実際に、逮捕されたケースがあります。また、ICPO(国際刑事警察機構)を通じて誘拐犯として国際手配される事案も生じています。

したがって、国際結婚後に生まれた子を日本に連れて帰る際には、上記の事情に配意する必要があります。具体的な案件については、家族法専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

(注1)16歳未満の子の連れ去りの場合、罰金若しくは3年以下の禁錮刑又はその併科を規定(連邦法Title 18, Chapter 55, Section 1204)。州法により別途規定がある場合もあります。
各州の規定の詳細については、以下のNational District Attorneys Associationのウェブサイトを参照下さい。
http://www.ndaa.org/pdf/Parental%20Kidnapping%20June%202010.pdf

Q2 ハーグ条約とは、どのような条約ですか?

A.国境を越えた不法な子の連れ去りを防ぐことなどを目的として、1980年、ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)が採択されました(平成27年4月現在、締約国数は93か国)。

日本政府は、平成26年1月14日、ハーグ条約に署名し、平成26年4月1日、我が国において、ハーグ条約が発効しました。

この条約の締約国は、監護権者から他の締約国に不法に子を連れ去られたとの申立てを受けて、子が元々居住していた国に迅速に返還されるようにするための措置をとらなければなりません。なお、父母間の親権をめぐる問題は、子が元々居住していた国へ子が返還されたのち、その国の裁判所にて審理・結審されることが想定されています。 上記のとおり、この条約は、片方の親の同意を得ないで不法に連れ去られた子の返還について定めるものですから、子の居住していた国の法律・手続に従って合法に日本に連れてきた子はこの条約の対象とはなりません。

未成年の子の日本国旅券の発給申請

未成年の子の日本国旅券の発給申請については、親権者である両親のいずれか一方の申請書裏面の「法定代理人署名」欄への署名により手続を行っています。
ただし、旅券申請に際し、もう一方の親権者から子の旅券申請に同意しない旨の意思表示があらかじめ在外公館に対してなされている時は、旅券の発給は、通常、当該申請が両親の合意によるものとなったことが確認されてからとなります。

なお、米国においては、父母の双方が親権を有する場合に、一方の親権者が16歳未満の子を他方の親権者の同意を得ずに国外に連れ出すことは刑罰の対象となる可能性があり、上記(Q1 A.)のとおり、米国へ再入国した際に逮捕されたり、国際手配されたりする事案が生じています。当館では、16歳未満の子の旅の発給券申請の際には、他方の親権者の不同意の意思表示がない場合であっても、旅券申請に関する両親権者の同意の有無を口頭で確認させて頂いています。

ご相談は早めに関係団体・機関へ

国際結婚されている方の中には、外国人の相手とのコミュニケーション・ギャップや価値観の違いによるストレス、虐待など深刻な事態に直面した場合の戸惑い、外国における孤独感などから、日本に子を連れて帰る事例が発生しています。しかしながら、そのような行動をとったことにより、犯罪者として扱われる等、国を越えたトラブルに巻き込まれることにもなりかねません。

両親間の争いが生じた場合には、子は翻弄され、心身ともに傷つくことが珍しくなく、成長過程の子どもにとって大きな負担を与える危険性もあるといわれています。そして、国境を越えて、両親間の争いが継続する場合、子が受ける影響は更に大きなものになる場合があります。

米国には、家庭内暴力(DV)等の家庭の問題に対応する相談団体・機関が多くあり、シェルター、カウンセリング、弁護士の紹介や法律相談、法的援護活動、生活困窮者に対する救済金申請支援及び、育児支援等の一連の情報提供を可能としています。また、これらの機関の中には、日本語での利用が可能な機関もあります。問題の兆候が見え始めたら、早めに各種団体・機関(注2)に相談されることをお勧めします。

(注2)本リストのうち、NPO法人日系ボストニアンサポートライン(JB Line, Inc.)と在ボストン総領事館との間には委託契約が締結されています(平成27年度現在)。本リストのその他部分については、一般的な情報提供として作成したものであり、当館が紹介・斡旋するものではありません。各機関への連絡・照会等は直接ご自身で行っていただくようお願いいたします。また、これら機関とのトラブル等については、当館として一切責任は負えませんので、あらかじめご了承の上、ご利用下さい。


【差し迫った危機の場合】
警察(911)

National Domestic Violence Hotline (1-800-799-SAFE(7233)、24時間利用可能)
(URLは、http://www.thehotline.org/。画面左上のget helpをクリックすれば、各州のDVセンター連絡先やメールでの連絡先にアクセスできます。)

【日本語でDV被害者支援をしている団体】
日系ボストニアンサポートライン(JB Line)

HarborCov (DVエージェンシー in Chelsea, MA)
http://harborcov.org/ 617-884-9799
サポート内容:24時間ホットライン・ケースマネージメント・緊急シェルターの斡旋・法律相談・経済相談・アウトリーチ
日本人スタッフ:1名、(アドボケート)617-884-9799
相談対象者は日本人に限らない。

Cambridge Health Alliance – Victims of Violence Program (病院)
http://www.challiance.org/Services/VictimsofViolenceProgram.aspx
サポート内容:各関連機関(裁判所、警察署、DVプログラム)との連携支援、簡単な法律相談や福祉相談、他機関への紹介、場合によっては裁判所や福祉事務所への付き添いなど。カウンセリングは病院患者のみ。
日本人ソーシャルワーカー:1名、(アドボケート)617-591-6419

Blue Sox (JDVサポートグループ)
blusox911@gmail.com
サポート内容: 毎月一回のアーバン不動産(ブルックライン)でのサポートグループ・メールでの相談受付

【日本人スタッフがいないものの何らかの形で日本語によるサービスを提供している団体】
Asian Task Force against Domestic Violence (ATASK)
http://www.atask.org/site
サポート内容:ケースマネジメント・法律相談・カウンセリング・緊急避難シェルター・アドボケート・アウトリーチプログラム

日本語での相談が可能な弁護士事務所

【米司法省内のサイト】
Directory of Crime Victim Services
http://ovc.ncjrs.gov/findvictimservices

Office of Violence Against Women
http://www.ovw.usdoj.gov/

各州のDV対策機関
http://www.ovw.usdoj.gov/statedomestic.htm

DVの定義について(日本と同様に、身体的な暴力のみならず、精神的なもの、性的なものも含まれます。)
http://www.ovw.usdoj.gov/domviolence.htm

【弁護士の検索:米国務省のサイトにおけるリーガルエイド紹介】 
http://travel.state.gov/abduction/incoming/legalaid/legalaid_4309.html#3